インターナショナル・フォスターケア・アライアンス

「モッキンバード・ファミリー・モデル」プロジェクトが始動しました!

IFCAの3事業の1つである、ケアギバー(ケアを与える者たち)のプロジェクトが始まりました。
それは、アメリカのNPOが開発した里親家庭支援プログラム「モッキンバード・ファミリー・モデル(Mockingbird Family Model、以下MFM)」を日本に導入する試みです。養育者と子どもの「孤立防止」や「養育不調の予防」をスローガンに掲げた挑戦がはじまっています。

・モッキンバード・ファミリー・モデル(MFM)とは?
 効果的な里親支援モデルとして諸外国で導入が始まっているMFMは、ベテランの里親家庭を中心にした支援ネットワークを構築します。
まず、経験豊富なひとつの里親家庭が”ハブ・ホーム”として中心に位置づけられます。彼らは同じ地域の6~10の養育里親や親族里親等の家庭である”サテライト・ファミリー”を常に励まし、指導する態勢をとります。ハブ・ホームはサテライト・ファミリーの里子たちに緊急事態が起きた場合は、その家庭に直接でかけていって支援し、ほとんど24時間態勢ですべてのサテライト・ファミリーにレスパイト(休息)を可能にします。ハブ・ホームは月に一度自宅を開放して、里親子たちを交えた夕食やパーティーをしてチームワークをはかり、里親に研修の場を提供します。

里親同士のつながりが希薄だと、里親が孤立します。どこに助けを求めてよいかわからなければ、やがて里親を辞めてしまいます。このMFMの目的は、里親のストレスと孤立感取り除くことによって、子どもたちを安全に養育する能力を培うことです。従来の「里親サポートグループ」の域を脱出し、児童福祉の実践そのものに疑問を投げかける、方法論がそこにあります。

このモデルは里親を増やすことや続けることに効果的であるだけでなく、子どもと実親の家族再統合にかかる時間を短縮し、子どもたちのパーマネンシー(永続的な養育関係)をより迅速に確実に築くという研究結果が出ています。
アメリカ・ワシントン州をはじめ、現在16のコンステレーションが各地に広がっています。


<MFMコンステレーションのイメージ図>
画像提供:アメリカ「モッキンバード・ソサエティ」http://www.mockingbirdsociety.org/index.php/what-we-do/mockingbird-family-model

アメリカでは1990年代から里親の数が減少の一途をたどりました。それには、いろいろな理由がありますが、里親の支援が充実していないことが一番に上げられるでしょう。虐待を受けた子どもたちの発達と情緒の問題が大きく、どんなに訓練を受けた里親でも支えきれない現実に直面し、アメリカは近年里親支援の効果的な方法を模索してきました。
そして今、画期的な方法として注目されているのが、モッキンバード・ソサエティが発案したファミリー・モデルです。

昔は日本でも、子どもたちは実親だけでなく同じ村に住む祖母・祖父、隣人に見守られながら育ちました。地域の里親たちが協力し合って里子たちを養育すること――このいわゆる「一村共同体家族」のようなコンセプトがMFMには取り入れられています。とても柔軟性の高いモデルであり、サテライト・ファミリーは地域に合わせて里親家庭以外も加えることが可能です。養子縁組家庭、家族再統合直後の実親子家庭、ひとり親、要支援家庭など、支援ネットワークが必要な家庭に応用していくことができます。

視察8

視察2
<ワシントン州を視察する日本の里親リーダーと研究者たち>

・MFMを日本へ!
 2013年5月。IFCAは、里親のリーダーや研究者等の7名の日本人をシアトルに招きました。
アメリカの児童保護システムの関係各所を訪問し、モッキンバード・ソサエティの創設者やディレクターと深い議論を重ねました。実際にコンステレーションのハブ・ホームを訪ね、里親やそのモデルで育った若者たちと意見交換をし、モデルを日本に導入した場合のシュミレーションを図式化しました。6月には視察チームに「日本モッキンバード・ファミリー・モデル実行委員会(MFM-Japan)」の名がつき、IFCAは日米のMFMに関する窓口となることを約束しました。

9月には、日本で実施された家庭養護の国際学会「IFCO2013大阪世界大会」でIFCAが分科会を実施しました。そこではMFMとその可能性について、IFCAとMFM-Jのメンバーが協力して発表しました。会場には、モデルに関心のある全国の里親会や行政担当者が参加し、多くの質問が寄せられました。

・日本の社会的養護の現状
 日本では、厚生労働省の「社会的養護の課題と将来像」において、里親委託率の引き上げや里親支援の必要について明文化されているものの、実際の取り組みについてはこれからです。社会的養護における里親への子ども委託率は約10%。国連からはシステム改善の勧告が続いています。
今まさに、家庭養護をめぐる多くの課題を抱えている日本において、MFMの試みが課題解決のヒントとなることでしょう。

・今後のプロジェクト
 今後は、MFM-Jと日本の里親会や行政が話し合いを重ね、本格的にパイロット版を開始するための準備をすすめていきます。IFCAも全面的に協力します。多くの皆さんのご支援・ご協力をお願いいたします。

ご質問等はMFM-Japan(mfmjapan@live.jp)またはIFCAオフィス(info@ifcaseattle.org)まで。

mfm

※本文は日本モッキンバード・ファミリー・モデル実行委員会HPより一部抜粋して改変してあります。
・「日本モッキンバード・ファミリー・モデル実行委員会」ウェブサイト

メンバー
粟津美穂(IFCA)
峰下拓(IFCA)
和泉広恵(NPO里親子支援のアン基金プロジェクト/日本女子大学)
藤めぐみ(レインボーフォスターケア)
林浩康(日本女子大学)
池田佐知子(福岡大学)
石川桂子(確認中)
木ノ内博道(全国里親会副会長)
木ノ内まさ子(千葉県里親)
小林由香里(愛恵会乳児院・里親支援専門相談員)
光武郁子(佐賀県里親委託推進員)
坂間多加志(ふじ虹の会)
坂野嘉昭(流通経済大学)